経済的な変動や生活環境の変化によって、住宅ローンの支払いが厳しくなって滞ってしまう人が増えています。それら支払いが遅れるは、決して無謀な住宅ローンを組んだわけでもないですし、怠けて働かなかったから、住宅ローンを返済できなくなったわけでもありません。
しっかりと身の丈にあった価格の自宅を購入してローンを組み、日々一生懸命働いて返済をしていた非常に真面目で優良な方たちばかりです。
けれども、めまぐるしく変わる経済情勢や環境の変化によって、例えば勤務先が倒産したり、転職を余儀なくされたり、あるいは所得が大幅に減ったりして、支払いが困難になってしまうのです。
誰のせいというわけではなく、住宅ローンという長期に渡る割賦の性質上、一定割合で支払いができなくなっていく人が生まれるのはしかたないことなのです。
支払えない時には、支払えない時の対処を
確かに、高額な預貯金があって、多少の状況の変動や支出の低下では、ビクともせず、預貯金で不足分を補って支払いをして、その間に態勢を整える人がいることも間違いありません。
しかし、現代社会においては、大きな預貯金を所有している人はかなり稀で、(特に若い世代を中心とした)ほとんどの世帯では、余力なく日々の生活を送っているのが現状です。
住宅ローンの支払いが厳しくなってきたときにすべきことはいくつかあります。
また、それぞれの段階で、やるべきことは異なりますし、状況によっても違います。
支払いが厳しくなった時に一番いけないのは、支払うことが難しいからといって、何も対処しないことです。何も対処しなければ、金融機関からの信頼をダブルで裏切ることになり、取り返しがつかなくなります。
お金を支払うが1つの信頼を損ねる。次に連絡をとって最善を尽くすということが2つめの信頼です。
支払えない時の対処法
例えば、一時的に支払いが厳しいだけの時は、銀行に支払いについて相談をして一時的にリスケという方法を活用することができるかもしれません。
あるいは、長期的に収入が減額になることがわかったのであれば、ローンの期間を長くして毎月の支払いを減らすために、同じ金融機関で組み直したり、他の金融機関で借り換えをするのも一つだと思います。(その場合は、追加で保証人等を要求されることもあるかもしれませんが、方法はいろいろとあります)
さらには、万が一もうどうにも支払えないほど経済状況が悪化して、将来的にも回復の見込みがない場合もあるでしょう。
そんな場合に、できる選択肢としてオススメなのが、任意売却という方法です。(任売とも言います。)※決して容易に任意売却したほうがよいと言うつもりは一切ありませんが、支払いに困った場合は、選択肢として十分考えられますので、ぜひ最後までご覧ください。
任意売却が必要になる理由
住宅ローンの残債よりも高額にマンションが売却できる場合は、売却したお金でローンを返済できるので問題ありませんが、売却額よりも住宅ローンの残債が少ない場合は、普通には売却できません。だから、任意売却という方法が必要になります。
売却額 < ローンの残債 → この場合は、普通には売却できない!しかも、多くの場合不動産を売るとこうなる!
さらにもっと進んで、ローンは支払えないし、もうどうにもできない場合は、競売といって、債権者が裁判所に申し立てをして、強制的に売却を行うことになります。この場合、当然のことながら一定の猶予は与えら得るものの、自宅を強制的に退去させられることになります。
少し難しいけれど、もし住宅ローンの支払いに困っていたら、最後まで読んでください!
任意売却とは何か?
住宅ローンを支払えなくなった場合で、かつ収入増加の見込みがない場合で最善の方法は、任意売却をすることだと思います。
任意売却とは、マンションや一戸建てのあなたの不動産を、ローンの残債以下の価格で売却することを指します。
その仕組みは、以下の通りです。
通常、住宅ローンを組むと抵当権が設定されます。いわゆる担保です。抵当権は、不動産登記簿に登記されるので、抵当権が設定されている場合、抵当権者である銀行の合意なしには、不動産を売買することができなくなります。
もちろん、売却想定額が担保額=住宅ローンの残債以上なのであれば、売却額でローンの残債を精算することを条件に、銀行は抵当権を抹消してくれて、売却できます。
しかし、売却想定額が住宅ローンの残債以下であれば、銀行は抵当権を外してくれることはなく、当然のことながら、不動産の売買ができなくなります。
考えてみると当然のことで、住宅ローンの残債よりも不動産の売却額が小さいということは、不動産の売却額が全額銀行に入っても住宅ローンは完済されず、銀行は残りの残債額を担保もない状態で取り立てる必要があるので、とてもリスキーだからです。
このように、住宅ローンの残債よりも不動産の想定売却価格が安い場合に、銀行に交渉して、不動産を売却できるように、抵当権を抹消してもらうことで、不動産を売却することを任意売却と言います。
これが任意売却です!
任意売却は銀行にとって最善の手
つまり任意売却は、銀行にとってのいわば、損切りみたいなものです。
住宅ローンを支払えなくなった人が、最終的にとる手段は、自己破産です。
あるいはその前段階で銀行ができることとしては、抵当権を実行して、不動産を銀行のものとすることです。
万が一、債務者が自己破産した場合は、基本的にはすべての債務が免責になるため、財産である不動産は競売にかけられて、債権者の間ですべての財産を割合で分配することになります。
競売物件は、通常の不動産の流通経路とは全く別物になるので、売却価格としては非常に安価になる上に、不動産の所有者が他に借金をしている場合は、売却額が按分されることになり、銀行の取り分が減ります。
銀行からすれば、競売されるよりはマシといったところ
競売よりはマシな任意売却
なので、債務者が住宅ローンの支払うことができないと銀行が判断した場合は、物件が競売にかけられるくらいなら、多少損をしてでも、不動産を任意売却してもらい、債権に充当したいわけです。
そして、住宅ローンを任意売却額で充当した残りの残債は、債務者から長期間かけて回収していく流れになります。銀行からすれば、回収リスクがグンと増しますが、それでも自己破産や民事再生されるよりは、ましと言うことができます。
さらに言えば、任意売却してから自己破産する人も多くいますが、この場合でも銀行は得になります。先ほどもお伝えしましたが、競売になると銀行の手を離れて相場よりかなり安い金額で売却される上に、銀行の取り分は、債権者数によってはかなり少なくなることもあるからです。
任意売却後に破産しても任意売却が得
銀行からすれば、任意売却の場合は、そのあと自己破産されると任意売却で回収した売却金額を債権に充当した残債が、回収不能になりますが、任意売却せずに自己破産されるよりも圧倒的にメリットが大きいことになります。
これは、このあとお話するメリットの部分で詳しくお伝えしますが、債務者であるあなたにとっても、不動産を所有したまま破産するよりも、任意売却してから破産したほうが利益になる可能性は高くなります。
収入増加の見込みが少しでもある場合は、一時的なリスケ(リスケジュール・返済計画の見直し)を銀行に申し出ることがもっともよいです。この場合は、一時的に収入が少ないだけで、その後は収入が増加するわけなので、その期間さえどうにかなれば、済むからです。方法論としては、銀行に支払いを一時的に減額してもらうか、預貯金があればそれを取り崩す、一時的にお金を借りるなどの方法が考えられます。
任意売却の7つのメリットとは?
では、任意売却をすることには、どんなメリットがあるのでしょうか。7つのメリットについて、それぞれ簡単に解説します。
- 競売に比べて高い価格で売却できる
- 近所に知られずプライバシーを保護
- 売却代金から諸費用を精算できる
- 残債を分割で返済できる
- リースバック等で住み続けることができる可能性
- 引っ越し費用を捻出できる可能性
- 売却条件の融通が効くこと
それぞれ詳しく解説しました。
1.競売に比べて高い価格で売却できる
まず、第1番目に挙げられるのは、競売に比べて任意売却は高い金額で不動産を売却することができるということです。競売は、裁判所の管理の下、不動産を売却する行為であり、買手が限られること、特殊な流通経路であるため、通常よりも売買価格が安くなります。
一昔前に比べて、競売を利用する人が多くなったので、多少価格相場は上昇していますが、それでも通常の相場の7~8割程度というのが現状です。
ところが任意売却は、通常の不動産流通と同じ形で売却されますので、通常の不動産と同じように取引がなされ、まったく同じ相場で売買されます。
2.近所に知られずプライバシーを保護
競売にかかると「物件が競売にかけられたものだ」とわかるように看板などが設置されたり、紙が貼られたり、関係者が出入りしたりして、物件が競売にかけられてことがわかります。
そうなると当然近所では、あなたが競売にかけられた人であることがおおやけのものになります。
ところが、任意売却でしたら通常の売買になりますので、あなたが経済的に困窮していると誰にも気づかれずに普通に売却することができます。
仮に、チラシ等であなたの家が売りに出されたのを知っても、普通の売買なので、競売と違って、借金を返せないためのネガティブな理由による売却だとは気づかれません。
3.売却代金から諸費用を精算できる
通常の売買では、不動産取引の際に、3%程度の仲介手数料の他に、抵当権抹消費用、(滞納している場合の)修繕積立金や管理費、固都税などを精算してからようやく所有権を移転することができます。
しかし、任意売却では、これらのさまざまな諸経費はすべて売却代金の中から充当されますので、支払う必要がありません。※このメリット3は、競売についても同じことがいえます。
4.残債を分割で返済できる
通常、競売にかけられると貸し手側の金融業者が期限の利益を喪失したとして、残っているローン(残債)を一括で支払うように求めてきます。
ところが、任意売却では少しでも多くの金額を回収できるように、任意売却の交渉時した際に残債を無理なく返済できるようにリスケすることができます。
もちろん、残債は任意売却した金額を充当したものになりますので、返済はかなり楽になると思います。
5.リースバック等で住み続けることができる可能性
任意売却する際に、親戚や業者に買い取ってもらい、今度は賃借人としてその家に住むという非常に新しいアイデアがあります。
親族などに借りるか、あるいは、リースバックといって業者に借りるかの差はありますが、信頼できる人に任意売却して、そこから賃借りすればOKです。
あなたは家を手放しながら、その家を住み続けることができるようになります。お気に入りの住宅の場合には、継続的に住み続けることができる唯一の選択肢と言って良いと思います。
※もちろん、銀行が応じてくれなければ実現しない他、うまくいかないこともあります。
6.引っ越し費用を捻出できる可能性
任意売却すると該当物件に住んでいる場合は、転居しなくてはいけません。仮に不動産が売却できる運びとなっても、実際に売買した後に、立ち退いて物件を引き渡さない限り、次の運用ができません。
そこで、任意売却を整理したときに移転手続きがスムースにいくように売却代金の中から最大で30万円程度まで引っ越し資金を準備するよう、交渉することができます。
きちんと退去までできるように、その資金までも任意売却代金の中から捻出できるわけです。
7.売却条件の融通が効くこと
また合わせて不動産の売買について、タイミングや金額などさまざまな条件が、競売に比べてある程度自由に設定できるのが、任意売却の良さでもあります。
競売は、裁判所の指示の中で進められますが、任意売却は基本的に普通の売買とそんなに大きくは変らないので、いろいろと選択肢が出てくるためです。
任意売却の5つのデメリットとは
たしかに、一般的には競売よりはさまざまな面で有利ですが、それでもデメリットがたくさんあります。ここでは、そんな任意売却の5つのデメリットについて解説していきます。
任意売却の5つのデメリットは、以下のようなものです。
- 滞納することが必要で手間と時間がかかる
- 債権者が同意しないといけず、必ずしも成功するとは限らない
- 信用情報に掲載され、金融ブラックになる
- 基本的に残債が残る
- 連帯保証人に迷惑をかけてしまう
それぞれ詳しく解説していきます。
1.滞納することが必要で手間と時間がかかる
まず、任意売却をしようとすると多大な手間と時間がかかりますので、大きなエネルギーを消費します。もちろん、それは破産、競売によるものよりは幾分か楽になると思いますが、それでもかなりのものです。
まずはローンの支払いをストップして、金融会社からの返済要求に応じながら、頃合いをみて任意売却の交渉をしていきます。そして売りに出して成約する一連の手続きには、最低半年以上の時間がかかります。
信頼できる業者を見つければ、しっかりと相談にのってもらって、基本的にはいろいろな手続きはお任せすることは可能なので、随分と楽にはなりますが。しかし、よい業者を見つけなければ逆に食い物にされる可能性もあるので、注意が必要です。
2.債権者が同意しないといけず、必ずしも成功するとは限らない
任意売却はその名も示すとおり、任意による売却なので、金融機関からの任意の合意が必要になります。
任意の合意なので、任意売却はどうやっても受け付けないという金融会社もたまにはあり、その場合はどうすることもできません。
ただし、基本的には金融業者としては、物件を所有したまま破産されて担保物権を競売にかけられて売却額を按分されるよりは、任意売却のほうが回収率が上がるので、正しく交渉していけば基本的には応じてもらえます。
また、最悪任意売却で買手が見つからなければ、競売、破産へと進むことになる可能性があることにも注意が必要です。
3.信用情報に掲載され、金融ブラックになる
任意売却をするためには、まず支払いをストップして数ヶ月滞納することが必要になります。
3ヶ月以上連続して滞納すると、CIC等の個人信用情報機関に「異動情報」として登録されることになります。いわゆる「金融ブラック」「ブラックリストに載る」といわれる状態のことです。
任意売却をすることによって、異動になるわけではなくて、そのプロセスで支払いをストップすることによって、異動情報が載ることをご理解ください。
金融ブラックになると、債権が終了して7年間はCIC等に掲載され続けますので、お金を借りたり、割賦で商品を購入したりすることができなくなります。
また、異動情報が消えると、信用情報がいったんなくなるので、信用がゼロベースからスタートすることになり、金融サービスの利用は引き続きしにくい状況が続くことになります。
4.基本的に残債が残る
通常、任意売却をすると、売却価格で残債を一括返済することは難しいです。そもそも残債をなくせるくらいの価格で売却できるのであれば、任意売却ではなくて、通常の売買になるからです。
残った残債は、金融機関と交渉になりますが、支払い方法を変更して分割で返済できるケースは多いですが、物件がない状態で返済をしつづけることが必要になります。
また、この残債部分をなくすために自己破産の道を歩まれる方も多数いらっしゃいます。
※自己破産してしまうのだったら、最初から任意売却なんてしなくてもよいじゃんと思われる方もあるかもしれません。しかし、任意売却をすることによって、「そのまま自己破産」するよりも有利になることが多いです。上部でまとめた「任意売却のメリット」のところをご確認ください。
5.連帯保証人に迷惑をかけてしまう
借金をした際の連帯保証人は、借金の契約者とまったく同じレベルで債務を背負っています。従って、任意売却をしようとして、支払いをストップすると、保証人にも請求がいくことになります。
そこで保証人が支払うと任意売却は進みません。
また、保証人も支払いをストップすると当然のことながら保証人も金融ブラックになりますので、その点も含めて、保証人に説明し納得してもらうことが必要です。
※基本的には、保証人がいる場合は任意売却はしないほうがよいと思います。
任意売却はメリットもあるがデメリットもある
このように任意売却には、メリットもあれば、デメリットもあります。また、任意売却は銀行に相談しながら、不動産を適切に市場で売却していくという、非常に複雑な作業が必要になります。
従って、通常は一般の方が自分の力だけで手続きするのは難しくて大変であることが多いです。
また、銀行にしても、不動産会社にしても、ワンストップで手続きをしてくれるところはほとんどありません。
任意売却について詳しい知識を持っていて、かつ経験値が豊富な人にしっかりとサポートしてもらう必要があります。ところが、任意売却はここまで述べたように、非常に難しい専門的な内容で、銀行マンにしても、不動産業者にしても、ほとんどの人がその内容を理解していません。
なので、無理矢理任意売却をさせて自社の利益をたくさん稼ごうとする悪徳な業者も多いのが実情です。
本当にあなたの立ち位置にたった業者を探そう
そういう意味で、一番大切なことは、本当にあなたの立場にたって相談にのってくれる業者を探すことです。
- 本当にあなたは任意売却をしたほうがよいのか?
- 銀行にリスケを依頼するだけで話がまとまる可能性はないか?
- あるいは、まったく別の、想像できないような方法で解決できる可能性はないか?
あなたの立場にたって、一緒に対策を考えてくれる業者が必要です。
私たちは、本当に「あなたのためになる選択肢」を「探し」「提供する」不動産のプロフェッショナル集団です。お客様にとって「最善のメリットを得られる選択」しか提供致しません。
お客様の求めているものは何か、その実現のためにもっとも効果的な方法は何か、本気でコンサルティングさせて頂きます。
住宅ローンの支払いでお困りの方は、一度お問い合わせください。