金融機関からローン借入をして、不動産投資をする場合は、金利上昇リスクについて考えておく必要があります。
なぜなら金利が上昇すれば、ローン返済額が増加し、不動産投資の収支計画に影響を及ぼすからです。そのため、事前に金利上昇リスクを理解し、事前対応することが必要です。
- ローン金利が3.0%から、4.0%に上がり、毎月の返済が5千円増えたが、事前に金利上昇によるローン返済額が増えることをシミュレーションで見込んでいたので、対応できた
- 計画的に繰り上げ返済をしていたので、金利上昇の際にリスクを軽減することができた
上記のように、金利が上昇しローン返済額が増えたとしても、事前対応によりリスクヘッジが可能となります。
今回は、不動産投資における金利上昇リスクの把握と事前対応について深堀してご説明をさせていただきます。
金利上昇リスクとは?
金利上昇リスクとは金利が上昇することにより、不動産投資のローン返済額が増えるリスクのことをいいます。
金利が上昇するまでは、不動産投資で収益がプラスであったのに金利が上昇したことにより、ローン返済額が増え、収益が上がりにくくなった。そのようなことも考えられるのです。
そのため、まずは金利上昇リスクとはどういうものなのか?ということを理解して、事前対応を実施することが必要になります。
金利上昇の背景と将来予測
それではまず、なぜ金利が上昇するのか?という背景と将来予測について簡単にお話をさせていただきます。
金利が上昇する背景としては需要と供給のバランス、そして日銀の金融政策が大きく関わってきます。
お金を借りる(需要)人が増えるほど、金利が上昇し、お金を借りる人が少なければ金利は下がる傾向にあります。
現在は日銀のマイナス金利政策から、各企業での資金調達の円滑化、設備投資、そして訪日外国人向けの店舗やホテルの需要拡大で、景気が良くなってきています。
またローンの金利が低いこともあって、不動産投資の人気が高まり、多くの方が不動産投資を始めるようになりました。
そういった景気の影響もあり、2018年1月1日時点での公示地価が発表されましたが、全国の地価上昇率は対前年比、+0.7%となり、バブル期以降初めて3年連続で地価が上昇しています。
日銀の金融政策が発端となり、低金利が続き、その結果、地価が上昇したといっても過言ではありません。
現在は低金利が続いていますが、このまま景気が更に良くなってくれば、需要と供給の関係から、5年~10年後、金利が上昇していく可能性は十分考えられます。そして、金利が上昇すれば、ローンを借りる人が減り、不動産投資へのハードルは上がることが予想されます。
そのため低金利が続いている現在は、不動産投資には非常に条件が良いのです。
金利上昇の要因は上記のように、需要と供給の関係そして、日銀の金融政策と大きく関わりがあります。
金利上昇リスクへの事前対応
今後、金利が上昇するか、低下するかは、日銀の金融政策、市場の動き、人々の心理が密接にかかわってくるため、私たち一人ひとりでコントロールすることは難しいです。
しかし、市場の金利動向を予測して、事前対応をすることは可能です。
そこで将来金利が上昇し、ローン返済額が増えたとしても対応できる具体的な対策について、情報提供させていただきます。
金利上昇リスクへの事前対応策は3つあります。
- 低い金利でローン借入をするために最善を尽くす
- 金利が上昇した場合の収支シミュレーションを組んでおく
- 繰り上げ返済をする
以上の三つになります。それぞれご説明していきます。
1.低い金利でローン借入をするために最善を尽くす
契約時に可能な限り、低い金利でローン借入ができれば、金利が上昇した際でも、リスクヘッジとなります。
低い金利とは大体1~2%台後半、高い金利は3~4%台と考えていただければと思います。
この項では契約時に可能な限り、低い金利でローン借入をするための最善の方法をご提供します。
金融機関の審査基準
まず、どれくらいの金利条件でお金を貸し出すかは各金融機関によっても異なりますが、主に以下の三つの条件をそれぞれ評価し、ローン借入の金利、審査が通るかどうかを決めています。
ローン審査の項目
- 個人の属性
- 購入物件の資産価値
- 購入物件の収益性
それぞれの内容と事前対応についてご説明していきます。
個人の属性と事前対応
ローン借入をする方の年収や勤務先、借入状況、預貯金残高などの個人の属性は、ローン審査において重要な評価項目です。
なぜなら、金融機関はローン借入をした方が将来に渡って確実に返済をしてくれるかどうかを見ているので、属性評価が高く返済の信頼がある方にお金を貸したいと思うからです。当然、無職や多額の借金を抱えている人に金融機関はお金を貸そうとは思いません。
以下に個人の属性に関係する項目を挙げました。
- 年収
- 年齢
- 勤務先
- 勤続年数
- 所有している資産状況
- 両親の資産状況
- 連帯保証人
- 個人の信用情報
上記の項目をそれぞれ総合的に評価して審査の判定をしているのです。
属性評価に関する話をすると、年収や勤務先などの属性評価が低くても、勤続年数、預貯金残高を増やしたりすることで、不足している属性を補うことができます。
個人の属性には、年収や勤務先、親の資産状況などすぐにコントロール出来ない部分と、自分自身で改善してコントロールできる、この二つがあります。
そのため、自分自身で改善できる属性項目を良くしていくことが、ローン審査で評価を上げ低金利でローン借入をするためには必要になります。
以下に属性評価を上げるために、自身で改善できる項目を挙げました。
- 貯金をする
- 借入返済の延滞しないこと
- 勤続年数が3年以上経ってからローン審査を申し込む
以上のことを実施して属性評価を上げることができます。
購入物件の資産価値と事前対応
購入物件の資産価値が高いと、金融機関からの評価が高くなります。
金融機関は、もしローン借入をしている人が返済不可能になった時に、担保で入れていた不動産物件を売却して、その売却益を元にローン返済に充てます。
ですので、資産価値が高い物件は評価が高くなり審査に良い影響となります。
資産価値が高い物件とはどういうことか?以下に具体的な項目を挙げました。
- 新耐震基準を満たしている(1981年6月以降に建築確認を受けて施工された物件)
- 駅から近い(駅から10分圏内)
- 東京23区内等、都心部の物件である
- 融資期間=(47年−築年数)となるように、築年数が古すぎない
- 大規模修繕工事が実施されている
上記のような物件は資産価値が高いです。例えば、旧耐震基準の物件を選んだり、駅から歩いて遠い物件(徒歩15分以上)は資産価値が低くなりますので、出来るだけ低い金利で借入を実現するには資産価値の高い物件を選びましょう。
購入物件の収益性と事前対応
購入物件から今後収益が見込めるかどうかも金融機関側からすると重要な評価項目です。
金融機関は個人の属性、購入物件の収益性から毎月のローン返済が出来るかどうかを判断します。
そのため、たとえ個人の属性が良くても、物件の収益性が悪ければ、審査に落ちたり、良い条件でローンの借入を出来ない場合があります。個人の属性とともに、物件の収益性の評価を高くすることも非常に重要です。
物件の収益性とは具体的に、年間の家賃収入と空室率、返済額、経費、銀行が独自に算出した利回りによって、各金融機関が独自の計算を行い、評価が高いか低いかを決めています。(※各金融機関によって算出方法は異なります。)
以下に物件の収益性を判断する計算式の例を一つご紹介します。
上記の計算結果から、評価額が高い物件は収益性が高いと判断できます。
収益性の評価を上げるポイントは、年間家賃収入だけを見るのではなく、空室率が低い物件、年間経費を出来るだけ抑えられて、収益が上がりやすい物件を選ぶことです。
空室率が低いとは、物件の立地と環境が良く、年間経費は管理費・修繕積立金や賃貸管理集金代行手数料などのことで、それらの経費を抑えることで、収益性の評価が高くなります。
「契約時に可能な限り、低い金利でローン借入をするために最善を尽くす」この項のまとめ
上記三つ、個人の属性、物件の資産価値、物件の収益性を総合的に判断して、金融機関は金利の条件を低くするか?審査を通すかを決めます。
そのため、例え年収が300万円で属性評価が低いとしても、その他の預貯金残高、勤続年数、親の資産状況が良いなど、その他の項目でカバー出来れば、低い金利でローン借入、審査に通る可能性は十分にあります。
また、個人の属性が低くても、物件の資産価値や収益性で高い評価を得ることが出来れば、うまくカバーすることができます。
自身の属性の良い点を総合的に集め、資産価値・収益性の高い物件を選定すれば、金融機関の審査評価も高くなり、低い金利で不動産投資を始めることができるのです。
ぜひ、この項でご説明した3つのローン審査項目と事前対応を押さえ、最善を尽くし、その結果として低い金利でローン借入を行ってください。
2.金利が上昇した場合の収支シミュレーションを組んでおく
ここまで低い金利でローン借入をする方法についてお話しましたが、この項では、金利が上昇した場合のことを考慮した収支シミュレーションについてご説明していきます。
金利の上昇により、毎月の支出が突発的に増えた場合に収支計画が狂い、対応できないことがあります。
そのため、ローン返済額が増えたとしても事前にある程度予想して、余裕を持った収支シミュレーションを組んでおけば適切に対処することができます。
実例でご説明すると物件購入のため、ローン借入1,270万円、借入期間25年、金利2.95%で借入をした場合に、ローン返済総額は約1,796万円になります。
ここでもし仮に、10年後、金利が2.95%→5%に上昇した場合に、ローン返済総額は1,957万円となります。
上記の例では、10年後に金利が約2%上昇した例ですが、金利数%の違いで数十万円~数百万円の返済総額の違いがあるので、事前に金利上昇を見越したシミュレーションをすることで家計の負担を軽減することができます。
事前にシミュレーションするとは?
事前に金利上昇を見込んでシミュレーションするとは、余裕資金を準備しておくということです。
例えば、上記の計算の例だと、10年後に金利が約2%上昇した場合は、約160万円の返済総額の違いがあるので、その余裕資金を準備する必要があります。
毎年20万円ずつ余裕資金を積み立てすれば、10年後には200万円になっています。しっかり計画的に資金を準備しておけば、金利が上昇しても慌てることはありません。
もし金利が上昇しなくて余裕資金だけが残れば後に説明します、「繰り上げ返済」に充てることも一つの手でしょう。
事前シミュレーションをして、金利上昇リスクに対応しましょう。
3.繰り上げ返済をする
3つ目の対策としては、繰り上げ返済があります。
繰り上げ返済とは、返済期間の途中である程度まとまったお金を借りた金融機関に返すことです。
繰り上げ返済には、ローン返済の期間を短縮するか?毎月の返済額を軽減するか?この二つがありますが、いずれにせよ、支払う利息を軽減することが出来るので、金利が上昇した際にリスクヘッジとなるのです。
今は、繰り上げ返済で手数料がかからない金融機関もあるので、ある程度余裕資金があれば、繰り上げ返済をして出来るだけ早くローン残高を減らすことをお薦めします。
人それぞれ、資金の計画性は異なると思うので、毎年10万円でも50万円でも可能な範囲で繰り上げ返済することで金利上昇リスクにも対応することができます。
ただ、繰り上げ返済をしすぎて、家計が苦しくなってしまうのは本末転倒なのでそこはしっかり注意をしましょう。
まとめ
以上、金利上昇リスクと事前対応について、三つの具体的な対策をご紹介しました。
改めて金利上昇リスクへの事前対応について整理します。
- 低い金利でローン借入をするために最善を尽くす
- 金利上昇に向けてシミュレーションをする
- 繰り上げ返済をする
今回の記事を通して、私が最も伝えたかったのは「事前対応することで、金利上昇リスクに対してリスクヘッジができる」ということです。
金利上昇リスクについてしっかりと理解し、そして正しい事前対応を取り組むことであなたの不動産投資は必ずうまくいきます。
今回の不動産投資、金利上昇リスクに関するご説明を聞いてみてどう思われたでしょうか?
わからない点やもう少し詳しく聞きたいなど、ご要望があればお気軽にお問い合わせください。