サブリースとは、賃貸管理会社が不動産オーナーから物件を借り上げて、賃借人に転貸する賃貸管理における契約形態のひとつのことです。
もっとも多いのが、アパート建築業者によるアパートオーナー向けのサブリースです。
大東建託や旭化成、レオパレスなど、ほとんどの大手アパート業者は、サブリースによる賃貸管理契約を締結しています。また分譲賃貸マンションで言えば、スカイコートなどもサブリースを提供していることが多いです。
簡単にいうとそれだけなのですが、普段聞き慣れない言葉であり、不動産投資独特の考え方なので、意味や仕組みがなかなか理解できないと思われる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、サブリースとは何か、その意味と仕組みを超わかりやすく簡単に解説しました
※参考:賃貸管理会社が不動産を借り上げて転貸せずに自社で使う契約方式のことをマスターリースと言います。
サブリースとは
改めましてサブリースとは、賃貸管理の一形態で、サブリース会社がオーナーの所有している物件を借り上げて、入居者に転貸することです。
サブリース業者が入居者としてオーナー様から物件を借りて、サブリース業者が借りた物件を又貸しして賃料収入を得るということです。
物件が空室の時でも、サブリース会社はオーナーに転貸賃料の一定額(賃料)を支払います。(※転貸とは、借りたものを更に人に貸すことです。転貸賃料とは、入居者からサブリース会社に支払う賃料です。)
入居者から得た転貸賃料とオーナーへ支払う賃料との差額から、サブリース会社は利益を得ています。
図1.オーナー、サブリース会社、入居者
賃貸管理の4種類
不動産経営をするにあたって、新しい入居者を募集したり、申込の契約を交わしたり、退去の際の立ち合いや、空室時の物件管理など、賃貸管理業務が必要になります。
この賃貸管理は、以下4つの管理形態があります。
- 自主管理
- 一般管理
- 集金代行
- サブリース
サブリースは、基本的には賃貸管理の一形態という位置づけになります。
※賃貸管理について詳しくは、以下の記事を参照ください。
参照記事:
自主管理と一般管理とは?
賃貸管理形態の中で、自主管理・一般管理はオーナーと入居者間で賃貸借契約を結びます。
※賃貸借契約とは、一方が所有している物件を他方に貸し出すことで、借り手が賃料を貸し手に支払うことを約束する契約のことです。
図1.オーナーと入居者、賃貸借契約
集金代行契約とは?
集金代行は、賃貸管理会社が賃貸人代理として入居者と賃貸借契約を結びます。
そして、家賃収入は入居者からオーナーに入ります。
図2.入居者からオーナーへの家賃収入
集金代行の場合は、集金代行手数料が引かれ、賃貸管理会社経由でオーナーに家賃収入が入ってきます。
サブリース契約の仕組み
サブリース契約は、オーナーが所有している物件をサブリース会社が一括で借り上げ、入居者に転貸(又貸し)をします。そして、オーナーとサブリース会社、サブリース会社と入居者、それぞれで賃貸借契約を結びます。
図3.サブリースの賃貸借契約
そして、まず入居者はサブリース会社に家賃を支払います。この家賃は転貸賃料といいます。サブリース会社は入居者から家賃を得て、オーナーに賃料を支払います。
図4.サブリースの収入構造
この転貸賃料と賃料の差額が、サブリース会社の利益となります。
サブリース契約のポイント
- サブリース契約は、オーナー、サブリース会社、入居者でそれぞれ賃貸借契約を結ぶ
- オーナーには、サブリース会社から賃料が入ってくる
- サブリース業者は、入居者からの賃料とオーナーへ支払う賃料の差額で利益を得る
サブリース賃料の相場は?
サブリース時の賃料は会社によって、異なりますが、大体転貸賃料の80~90%程度が相場です。そして、転貸賃料と賃料との差額10~20%がサブリース会社の利益となります。
賃料の具体例を、転貸賃料7万円、8万円、9万円、10万円のケースで挙げました。
転貸賃料 | 70,000円 | 80,000円 | 90,000円 | 100,000円 |
賃料
(転貸賃料の80~90%) |
56,000円~
63,000円 |
64,000円~
72,000円 |
72,000円~
81,000円 |
80,000円~
90,000円 |
所有している物件の家賃から、賃料がどれくらいになるのかを理解しておきましょう。
※詳しくは、サブリース賃料の相場はいくら?をご参照ください。
サブリースが普及している理由
当然のことながら、サブリース契約がしっかりと履行されるのであれば、オーナーとしてまったくリスクなくマンションやアパートなど不動産を運用することができるので、おいしい話ということができます。
だから、サブリースを組んでいる人が多いのかというと、そうではありません。サブリース契約を結んでいるオーナーが多いのには、別の理由もあるのです。
意外な真実
先にもお伝えしましたが、サブリースはアパート建築会社派生の賃貸管理会社が多く活用している方法です。(旭化成や大東建託などの賃貸管理形態の99%がサブリースといわれています。)
アパート建築業者は、当然のことながら、アパートを建築してもらうことで、収益を得ることができます。アパート建築業者も競争が厳しいので、空き地を所有しているオーナーに対して、猛烈な営業活動をします。
そのエリアの賃貸需要があるかどうかは関係ありません。(すべての営業マンがこうなのではないですが、かなりの割合該当するでしょう。)
アパートを建築したらサブリースになり大家には家賃が入るわけなので、どんどん提案することができるわけです。
そして、こんな場所にアパート建てて儲かるんだろうか?と疑念を抱く人に、「大丈夫です、うちでサブリース契約をして、家賃を確実にお支払いしますよ」と、アパート建築の断り文句を消して、クロージングしていくことになるのです。
このようにしてアパート建築営業とサブリースは、表裏一体、一蓮托生の関係性になっているので、サブリースは放っておいてもどんどん増えていくことになるのです。
サブリースの問題点
今ご覧頂いたとおり、サブリースは、オーナーがリスクを負わなくて済むように、賃貸管理会社がリスクを代わりに背負うことで成り立つビジネスです。そして、サブリースを実行しているほとんどのアパート会社は、サブリースによる利益は得られていません。
ほとんどが、アパートを建築する際の利益で成り立っているからです。サブリースはとんとんか下手したら赤字経営で、その利益の補填をするために、アパートを建築させてサブリース件数を増やしていくという非常に厳しい悪循環に入っているのです。
サブリース料金は変動する
さらに、上の契約条件でもさらっと最後に記載しておきましたが、サブリース契約をする際に、契約条件の変更についての条項が含まれることがあります。これは、当初の想定通りの家賃水準であれば、規定通りの家賃を支払うけれど、家賃相場が下落したら、併せて借り上げ賃料も下げますよというもので、トラブルの火種になっています。
特に、物件が古くなると得られる賃料も下落していくので、築年数が経過すると問題が生じてくることが多いです。また、今はまだよいですが、2020年以降空室問題が悪化してくるとさらにトラブルは頻発することになるでしょう。
頻発するトラブル
というのもオーナーとしては、サブリース契約は、基本的にずっと同じ家賃が振り込まれると思っているのに、賃貸管理会社としては、当然家賃相場が下落したら借り上げ家賃も下がるものだと思っているからです。にもかかわらず、アパート建築時にはオーナーにとって不利になるので、堂々と告知しないから認識にギャップが生まれるのです。
また、もっと最悪なパターンとしては、サブリース業者が倒産して、家賃が振り込まれないことです。この場合、賃借人は賃貸管理業者に家賃を支払っていますので、業者が倒産してしまい家賃の不払いが起こった場合、だれもオーナーに家賃の補填をすることがありません。
サブリースの致命的な欠点は、まさにこのサブリース業者自体が倒産するリスクがあることです。
そして、サブリース業者はアパート建設業者であることが多く、ほとんどがアパートの建築利益で食っており、サブリースはほとんど儲かっていません。従ってアパートを建て続けない限り、業者として継続することは難しく、狩猟型の経営スタイルなので、倒産するリスクがかなり高いということになります。
※もちろん、分譲賃貸でも同様のケースが多々あります。
サブリースに関するトラブル事例
2018年は、社会問題にも発展したシェアハウス投資、サブリース賃料の支払い停止、サブリース会社倒産の問題がありました。
このシェアハウス投資の中身は、オーナーが土地と建物を含め1億円~2億円近い金額でシェアハウスを購入し、それをサブリース会社が一括で借り上げ、転貸するビジネスモデルです。
オーナーは、年収600~1,000万円以上の上場会社の会社員や経営者がターゲットでした。
シェアハウスに入居者が安定して付き、サブリース会社に家賃が継続的に入ってくれば、オーナーにも滞りなく賃料を支払えます。しかし、入居率は非常に悪く、一時入居率34%の時もありました。
当然、入居者がいなければ家賃がサブリース会社に入ってこないため、利益が上がりません。
オーナーに支払う賃料も減額せざるを得なくなり、最終的にはサブリース賃料の支払い停止、会社の倒産ということになりました。
参照記事:
問題の最終的な結末
最終的に多くのオーナーは、入居者率が低いシェアハウス物件と、数千万円、数億円の借金が残りました。今も、借金返済に困窮しているオーナーがたくさんいます。
この事例では、そもそもシェアハウスに入居者が付かないような物件であること、そしてサブリース会社の売上至上主義が問題です。
この事例で、サブリース自体が悪いわけではありませんが、結局は入居者が継続的に付かなければサブリース会社に家賃が入ってこないので、ゆくゆくはオーナーにも賃料が入って来なくなる、ということです。
サブリース契約の最低限の知識を持っておく
さまざまなトラブルに対応するには、オーナー様が、サブリース契約について最低限の知識を持つことが重要になります。
サブリース契約は、オーナーが貸主、管理会社が借主の立場になります。
そのため、借地借家法上、オーナーが突然サブリース契約を解除しようとしても、正当な理由がないと解除が難しい場合があります。また、借主の立場から貸主へ家賃の減額請求をする権利もあります。
(※借地借家法とは、建物を所有する際に地上権、土地賃貸借、建物の賃貸借それぞれについて定めた法律のことです。)
更に、サブリース契約には免責期間、原状回復費用の負担や解約時の違約金など、さまざまな規定が定められています。
サブリースのさまざまな規約とガイドライン
これらの規定について、契約時にオーナーと業者側でしっかり意思疎通が取れて、サブリース契約の中身についてお互い理解し合っている状態であれば、後々大きなトラブルに発展するケースは少ないと思います。
しかし、サブリースの多くの契約では、業者側がオーナーに対してメリットを誇大表現して、オーナーがそれを信用して、トラブルに発展するケースが多々発生しています。
2018年10月に国土交通省、金融庁、消費者庁の同時発表で、サブリース契約に関するトラブルへの注意喚起がされました。
徐々にサブリース契約に関する規定が厳しくなってきています。しかし、まだまだ契約内容の複雑さや、サブリース契約独自の取り決めから、オーナー側は細心の注意をして、契約内容を確認しなければいけません。
参照記事:国土交通省・サブリース契約に関するトラブル注意喚起
以上のことから、オーナー側もトラブルに巻き込まれないように、サブリース契約について最低限の知識を持っておく必要があります。
サブリース契約で確認する事項
以下、サブリース契約で必ず確認すべき項目を挙げました。
ここでは概要説明に留めますので、詳しくは以下の参照記事をご確認ください。
- 賃料は減額する可能性があること
- 賃料が入ってこない、免責期間があること
- 正当な理由がない限り、オーナー都合でサブリース契約を解約できない場合があること
- サブリース契約の解約には違約金が発生する場合があること
- 原状回復費用を負担する場合があること
- 礼金、更新料を受け取れないこと
参照記事:
上記の項目と、「契約書に記載している内容」を確認するのも重要です。
なぜなら、賃料の減額や免責期間、違約金の有無などの詳細な内容は、契約書に記載している内容をベースにしているからです。
サブリース契約する際の注意点
また、サブリース契約の規定にはありませんが、以下の点も必ず確認ください。
- サブリース会社倒産の可能性
- 物件売却時に資産価値が低くなる場合があること
- サブリース会社から一方的に、契約を解除される可能性があること
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