入居者が家賃を滞納されて何ヶ月も支払ってもらえない!あるいは、家賃を支払ってもらえないばかりか、夜逃げをされた!
基本的にはあってはいけないことですが、長く不動産経営をしていくと、どうしても避けては通れないケースもあります。
過去さまざまな滞納や夜逃げの対応、回収経験を元に、不動産管理の達仁が入居者が滞納したり、夜逃げをしてしまった場合の対処法について解説します。
賃貸管理は、原理原則通りに取り組んでいけば、回収率は限りなく100%に近づけることができます。ただ、ルールを破って楽をしようとすると足下をすくわれて、回収困難な状況を作ったりするので注意下さい。
滞納された時の対処法
まずは、滞納された時の基本的な対処法について触れていきます。その後、滞納よりも厄介な夜逃げへの対処法へと言及します。一部、内容が被るところもありますが、それぞれ異なる対処法としてご紹介していきます。
賃貸管理を自分で行っている大家さんの中には、家賃を滞納されて、困った経験をしたことがある方が大勢います。一言で滞納といっても、状況や相手によって、滞納されるパターンはいろいろとあります。私たちが経験的に知っているよくあるのは、次の5つのパターンです。
- 基本的には毎月期日通りに支払っているが、たまたまスポットで支払い忘れて、その後期日通りに支払ってくれるパターン
- たまに支払い忘れて、期日を超えて支払ってくるパターン(事前連絡あり、なし)
- 毎月確実に遅れて支払ってくるパターン
- 連絡もなく家賃を支払わない上に、連絡がなかなかとれないパターン
- 夜逃げ等で行方不明になって、連絡がまったく取れないパターン
このように家賃滞納には、いろいろなパターンがあり、上から順番に下に向かって、程度がひどいということになります。賃貸管理を30年以上取り組んでいると、さまざまなパターンを目にします。そして、いろいろな傾向性があることに気づきます。
以下、家賃を滞納された際の一般的な対処法と滞納しそうな入居者の特徴や事前にできる滞納対策の方法などについて紹介していきます。
滞納処理でもっとも大切なこと
まず、家賃を滞納された際にすべき一番大切なことをお伝えしたいと思います。
それは、「最短・最速での回収」です。
滞納が判明したら、即、回収に動き出すことが重要です。
そして、できるだけ早期に回収することが必要です。というのも、経験的に滞納が発生して、回収が遅れるほど、事態が悪化しやすく高額な滞納につながっていくことになるからです。
考えて見れば当然のことで、家賃というのは、毎月発生するものなので、今月支払うのが困難であるなら、来月もまた支払うのが困難である可能性が高いからです。
なぜ最短回収か
万が一、家賃の滞納が1ヶ月以上経過しようものなら、入居者は2ヶ月分の家賃を支払わなければならないことになります。当然のことながら、1ヶ月分の家賃を支払えない人は、2ヶ月分の家賃を支払うことはできません。
1ヶ月滞納したら、翌月は2ヶ月分家賃支払う必要が発生する!1ヶ月滞納する人が、翌月2ヶ月支払うことができるのか?
なので、とにかく早い段階で督促して、家賃を回収し、滞納を解消することが必要になります。
ただし、入居者の事情もあると思うので、親身になって話は聞いてあげて、「いついつに支払う」という約束ができるのであれば、それまでは待つべきです。
しかし、それが次の家賃の支払い日を「またぐ」ようだと、その後の家賃を支払う当てはあるかしっかりとヒアリングして、どうするかを検討すべきということになります。
また、「支払うと約束した日」に支払いがない場合は、さらに強く督促しないといけないことになります。
入居者から回収できないで次の手段にでるタイミング
家賃の滞納をされたら、基本的に入居者に督促をして、家賃を支払ってもらうことが原則です。
しかし、延滞が1ヶ月をまたぐ場合で支払う約束が取り付けられない場合や、支払う約束を取り付けていたのに約束を反故にされた場合、あるいは連絡がとれないのが、1週間に3回以上継続する場合は、次のステップへ駒を進めるべきです。
つまり、家賃の保全に向けて動き始めるということです。
家賃を保全する方法
具体的には、賃貸契約した際の連帯保証人に督促をかけるということです。(保証会社を通している場合は即、保証会社に連絡をしてください。保証会社がすぐに家賃を支払った上で、入居者へ督促をしてくれることになります。これは、家賃の滞納があった瞬間に依頼してもよいですが、入居者との関係性を悪くするリスクがありますので、気をつけましょう。)
この入居者以外から家賃を回収した場合で、入居者から連絡がないまま次回の家賃も延滞された場合は、自動的に連帯保証人や家賃保証会社を通して回収していけばOKです。あとは、どこまでそれが続くかをしっかりと見守ることが必要になります。
連帯保証人へ請求した後
連帯保証人であれば、基本的に入居者と連絡が取れると思うので、間に入ってもらって、今後の予定を決めて下さい。つまり、退去するのかそのまま住み続けるのか、いつから入居者本人から家賃を支払ってもらうようになるのかなどです。
家賃保証会社の場合は、すべて家賃保証会社が督促等を行うので、特に気にする必要はなく、逆に家賃保証会社が協力を求めてくれた際に、必要な協力をすればよいことになります。
さらに状況が悪いと、家賃保証会社を入れていない場合で、連帯保証人にも連絡が取れなかったり、連帯保証人からも支払いを受けられない場合もあります。その場合は、最終手段にでることになります。
それは何かというと、「支払い督促」と強制退去に向けて法的な手続きに入ることです。
ここから先は、法律に則って、裁判所を通していろいろと手続きしていくことになります。もちろん、自分自身でも手続きできますが、基本的には、賃貸管理会社か弁護士を通して手続きしたほうがよいです。
というのも、内容証明を打ったり、裁判所でさまざまな手続きをしたりと、非常に面倒な手続きをしないといけないからです。また、裁判沙汰にまでならなくても、内容証明だけでも入居者も連帯保証人もビックリして支払ってくることもありますし、弁護士の名前があると効果的なパターンもあるからです。
支払い督促が重要
次のステップは、内容証明(きちんと支払い督促していることが証明できる形)で督促をして、それでも支払われない時に、期限を決めて裁判所を通じて「支払いの申し立て」と「退去命令」を訴訟することになります。
賃貸契約書に、家賃の支払いの義務と債務不履行時の退去については記載されていますので、裁判になれば、基本的にはオーナーのほうが勝ちます。
しかし、基本的に法律というのは、弱い者の味方をするというのが根底にあります。
なので、家賃の滞納の場合は、入居者は守られる立場にあり、大家さんが裁判等で支払い督促していくのは、非常に大変なこととなります。なので、しっかりと専門のプロといっしょに家賃回収していくことが必要でしょう。
いずれにせよ、ここまで大きく問題がこじれるのには、大家さんのほうにも原因があることが多いです。
大家さんの問題とは何か?
私が見ている限りでは、家賃の滞納が発覚した時の初動が遅かったり甘かったり、そもそも入居審査がしっかりとなされていないことなどが上げられます。
- 入居者審査のミス
- 滞納発覚時の初動の遅さ
- 滞納への対処のミス
しっかりとこれらの基本的な賃貸管理の原則を実行すると、大きなトラブルを抱えて回収にエネルギーを消費することはありません。あくまでも基本的なことを大切にすることが、賃貸管理の原則ということができるでしょう。
賃貸管理方式
このように家賃を滞納される大家さんは、主に、所有しているアパートやマンション、一戸建てをいわゆる「一般管理」してもらっている大家さんたちです。
不動産を賃貸しして、家賃収入を得る大家さんが、不動産を管理する際の方法としては、大きくわけて次の3つの方式があります。※詳しいことは、マンション経営における効果的な賃貸管理とは何か?をご覧ください。
- 一般管理
- 集金代行管理
- サブリース
1.一般管理
分譲型のワンルームマンション等を区分所有されている方の多くが集金代行やサブリースで、賃貸管理会社に不動産を管理してもらっているケースが多いです。
しかし、一棟でアパートやマンションを所有している方は、大家業を営む感覚で、客付けだけは不動産会社に依頼して、あとは自分で管理することが多いです。
入居者を探して、仲介してもらう、いわゆる客付けだけを不動産会社に委託して、賃貸管理は自分で行う管理を、「一般管理」と呼びます。
2.集金代行
一方で、大家さんの代理人として入居者を探して、仲介業者を利用して客付けをして、賃貸管理を代行する賃貸管理方法を「集金代行」と言います。
この方式だと、家賃は大家さんに変わって賃貸管理業者から賃貸管理会社が受け取って、大家さんに振り込むので、大家さんは滞納リスクを負う必要がないですが、逆に、家賃に対して5〜10%程度の手数料を支払う必要性があります。
3.サブリース
さらに、そもそも不動産自体を借り上げてもらって、入居者がついていようがいまいが、賃貸管理会社が家賃を支払ってくれる管理方式もあります。
それをサブリースといいます。サブリースは、賃貸管理会社が物件を借り上げて、賃貸管理会社が貸し主として入居者を探すので、大家さんは滞納リスクはおろか、空室リスクまで負わなくて済むことになります。
ただし、その分、賃貸管理費用として、家賃相場の20〜30%程度を賃貸管理会社に支払うことになります。また、借り主が賃貸管理業者になって、その業者が又貸しする方式なので、賃貸管理業者が倒産すると家賃収入を得られなくなることにご注意ください。
※サブリースについては、サブリースとは?意味と仕組みを超わかりやすく簡単に解説しましたをご覧ください。
夜逃げをされた場合の対処法
経済的な問題で夜逃げをする際には、基本的には必ず少し前から滞納が発生します。家賃を通常通りに支払わない上に、催促しても回収できない状態に陥ります。
夜逃げする場合は、夜逃げするのに一定の費用がかかりますし、その後の生活もあるためできるだけ家賃を支払わないようにしたり、そもそも家賃を支払う能力が全くない状態になります。
従って、回収は非常に困難になりますが、滞納家賃の回収時の対応が、その後の夜逃げに影響を与えることになります。回収がしっかりと入居者に寄り添った形でできたのであれば、「家賃が支払えないから」という理由だけでは、夜逃げすることはなくなるでしょうし、家賃が原因でなく夜逃げする場合についても相談のひとつもあるかもしれません。
家賃回収におけるもっとも大切な肝は人間関係の構築にありますので、少し面倒でも、しっかりと丁寧な対応をされることをオススメします。
普通、夜逃げはしない
このご時世、よほどのことがない限り人は夜逃げしません。借金取りなど、誰かから逃げるために夜逃げをする人もいると思いますが、それでも「今住んでいる場所」を捨てて逃げることは「まれ」です。
夜逃げといっても、いろいろなケースがあり、理由も方法も千差万別ですが、荷物を一切すべて置いて夜逃げするケースはさらに「レア」です。
もちろん入居者としても、夜逃げすると保証人に迷惑がかかることだってわかっているでしょうし、逃げた先での生活のことも考えるはずです。
なので、通常は夜逃げというのはあまり起こりませんが、当たり前ですが、夜逃げにはよほどの理由・事情があると考えてよいでしょう。
夜逃げした人からの回収
夜逃げをされて行き先がまったくわからなくなり、生死さえもわからない状態になると、入居者から家賃を回収するのは困難になります。
たしかに、入居者は夜逃げしたところで、家賃を支払う義務から逃れることはできません。しっかりと賃貸契約書にもサインをしています。
裁判をして勝訴すれば、差押えをすることもできます。しかし、居場所がわからなかったり、財産がどこにあるかわからなかったり、そもそも差押えする財産がなければ、裁判で勝って債務名義を取れたとしても、お金を回収することは困難です。
少し大げさなことを書きましたが、つまり入居者が家賃を滞納して夜逃げをすると回収が非常に難しくなるということです。夜逃げされると、連帯保証人から回収するしか方法はなくなってしまうのが基本です。
なので、基本的には入居者の夜逃げを未然に防ぐための工夫が必要です。しかし、それでもどうしても夜逃げを防ぐことができないことはあります。
具体的な回収方法
そんな時は、非常に常套手段になりますが、次の方法をとることからスタートして下さい。
以下、万が一入居者が夜逃げしてしまって家賃の回収が不可能な時に、取るべき対処法を優先順位の高い物から順に紹介します。
詳しくはその下で一つ一つ解説しますが、この回収手段は、優先順位の1番高い方法をやってみてダメなら優先順位2番と、順に取り組まないといけないものであることに注意ください。優先順位3番をやっていないのに、4番をやってはいけないのです。
- 連帯保証人・保証会社に請求
- 住民票を取得する
- 内容証明を打つ
- 支払い督促
- 少額訴訟
- 通常訴訟
それでは、ひとつずつ内容をみていきましょう。
連帯保証人・保証会社を当たる
まずは極めて当たり前のことですが、入居者本人から家賃の回収ができなければ、連帯保証人か保証会社に請求をかけます。連帯保証人は、本人とまったく同等の支払い義務をもっている契約を交わしており、通常保証書に実印をついてもらっているくらいので、正規の請求先になります。
従って、連帯保証人にも堂々と家賃の請求ならびに、原状回復費用等必要となる経費を請求してください。ただし、いくら連帯保証人に支払い義務があるとはいえ、相手は人です。
一方的に原状回復をして、未払い家賃といっしょに請求書を送ったのでは、相手も不快に思うでしょう。そうすると、いくら支払う義務がある人だって支払いたくなくなるので、あなたの仕事に対して、こっちは了承していないなどと主張することになります。
結果、返って回収が難しくなるので、請求書を送る前にまずは状況を説明して、連帯保証人に未払い家賃の支払い義務があること、原状回復費用の支払い義務があることなどを解説してください。そして、支払い方法や期日について相談に乗って、できるだけ柔軟に対応してください。
その上で、必要となる金額を伝え、原状回復については正確な金額をのちほど必ず見積もりして、支払いの了解を取ってください。そうすることで、トラブルなくお互いに納得のいく形で、家賃と原状回復費用を回収することができることになります。
要は納得感を保証人の中に作ってあげて、支払う同意を得ることが重要ということになります。
※保証会社に対して、規定の手続きを杓子定規に請求するだけで構いません。そこから先は保証会社の仕事になります。
住民票を取得する
連帯保証人や保証会社から回収できたらよいのですが、連帯保証人に何かしらの理由で請求できない場合で保証会社を通していない場合、基本的に請求する相手がいなくなるので、入居者からなんとか回収しないといけなくなります。(かなりレアなパターンです。)
そうすると、当然、相手の居所を突き止めて、請求をかけることが必要になります。
なので、まずは相手の住民票をとって移転先を探すようにしましょう。ただし、夜逃げする人は夜逃げするくらいなので、すぐには住民票を移さないことが普通です。なので、半年に一度くらいの割合で、住民票をチェックするようにしましょう。
あるいは、転送サービスを利用していることもあるので、手紙を書くのも一つです。その際重要となるのは、請求するぞとか脅すような内容ではなくて、相手に寄り添うような心配な気持ちを表現する形で手紙を書くことが重要です。
※家賃の請求の時効は5年ですので、5年経過しても住民票によって移転先さえ見つけられない場合は、諦めるしかありません。
内容証明を打つ
次に、移転先の住所がわかったら内容証明というものを送ります。内容証明とは、誰がどんな内容の手紙を誰に送って、いつそれを受け取ったかを郵便局が証明をするサービスです。
そこに未払い家賃の請求の旨を記して、送付してください。
内容証明は、単に請求したということを公的に証明する手段でしかなく、何ら回収する手立てにはなりませんが、入居者がビックリして連絡してきたり、支払ってくれる可能性が出てきます。
また相手が家賃の残債を支払う必要があるかどうか迷っているならかなりの効果が見込まれます。
支払い督促
内容証明を打っても連絡が来なくて回収できない場合は、裁判所に申し立てて支払い督促をすることになります。支払い督促は、裁判所が行ってくれる公的な督促です。支払い督促を入居者が受け取って、支払ってくれば問題ないです。
しかし、支払い督促を受け取って意義申し立てをした場合は、民事訴訟になり、家賃の支払い義務がそもそもあるかどうか等法廷で争うことになります。
あるいは、支払い督促を受け取ってもなお返事がない場合は、仮執行宣言が発行されることになり、相手の意義申し立てがなければ、強制執行して、財産の差押えをすることができるようになります。
少額訴訟
入居者の支払うべき金額が30万円の場合は、少額訴訟という形で簡易裁判所に申し立てをすることができます。通常の裁判に比べて1回の審理で、結審をもらえるため、回収コストを抑えることができるのが特徴です。
通常訴訟
入居者の支払うべき金額が30万円以上の場合は、通常訴訟を起こすことになります。
しかし、裁判で回収しようとなるとかなりの時間と労力をい必要とする可能性があります。顧問弁護士がいる場合等はまだよいですが、別途弁護士を付けるような場合は、かけるコストや労力と得られる利益を天秤にかけて判断することが必要になります。
※仮に勝訴して、差押えできる場合でも「相手の居所がわからない」「支払い能力がない」などの理由で必ず回収できるとは限りません。
未然に夜逃げ、滞納を防ぐために
家賃回収の基本的な考え方とすれば、しっかりと家賃の滞納を未然に防ぐことが必要です。家賃の滞納がなければ、夜逃げもなくなる可能性がぐっと減ります。
従って、一番大切になるのは、家賃の遅れが出た時です。その時に初動を大家としてどうとるか、賃貸管理会社としてどうとるかが非常に重要になるわけです。参照記事:家賃の支払いが遅れる時どうする?
また、万が一夜逃げが発生して、簡単に回収できないような時は、どこまで費用と労力をかけておいかけるかを検討しないといけません。
触れない袖は取れない
もし仮に裁判で勝って判決をもらっても、相手に支払い能力も財産もなければ、差押えするものもなく、回収することはできません。さらに、その相手が破産でもしてしまうものなら、そもそも請求することさえできなくなり、執行文も無意味になります。
もちろん、夜逃げしても回収できるように、連帯保証人や保証会社を通して保全をしておくことは大前提ですが、万が一の場合は、しっかりと採算性も考えて、早めに損切りすることも大切です。
保証人も保証会社も立てずに入居させていたとしたら、それは判断ミスと言わざるを得ませんので、痛い勉強代くらいに考えてもよいかもしれません。
その他、家賃の回収のことでお悩みの方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。プロの賃貸管理技術をフルに活用して、回収方法をご提案します。相談にお金は一銭もかかりません。安心してお問い合わせ下さい。相談方法は、電話でもメールでもフォームでもいずれでも構いません。