今から8年ほど前から空室対策という言葉が使われるようになってきました。住宅の供給過剰により、住宅の数は増えるが、肝心の住宅に住む人が増えていかない。需要と供給のバランスが崩れ、住宅の空室が増えてきました。
不動産オーナーにとって所有物件が空室ということは、大事な収入源の家賃収入が入ってこないということです。
ですからオーナーは一日でも早く入居者をつけて、家賃収入を得たいという想いがあります。
今回は空室で悩んでいるオーナーの空室原因の究明と空室対策の方法をご紹介いたします。
日本の住宅市場
まずは日本全体でどれくらい空室があるのか?日本の住宅市場について確認していきましょう。
冒頭で住宅の供給過剰という話をしました。1983年に日本の総住宅数が3861万戸、2013年に総住宅数が6063万戸となり、総住宅数が約1.57倍に増えています。
また空き家に関しては、1983年に空き家数330万戸、空き家率8.6%だったのに対し、20年経った2013年には空き家の数は820万戸と約2.5倍、空き家率13.5%にまで増えているのです。
では住宅に住む日本の人口は、1983年に約1億1953万人だったのに対し、2013年には約1億2729万人となっています。つまり人口は総住宅数と比較しても、20年で約1.06倍しか増えていないのです。
日本の人口、総住宅数、空き家数、空き家率についてまとめました。
人口 | 総住宅数 | 空き家数 | 空き家率 | |
1983年 | 1億1953万人 | 3861万戸 | 330万戸 | 8.6% |
2013年 | 1億2729万人 | 6063万戸 | 820万戸 | 13.5% |
増加幅 | 約1.06倍 | 約1.57倍 | 約2.5倍 | 約1.56倍 |
上記の表と数字から見てもわかるように、1983年~2013年までの20年間、人口の増加率に対して明らかに住宅の供給過剰により、空き家が増えているのです。
さらにこれからの日本は人口減少と、住宅のさらなる供給過剰により空き家がさらに増えていくと予測できます。
つまりこれは、オーナーの不動産物件の空室の割合がさらに増えていくと予測できます。
今回の記事はこの空き家、オーナーの空室問題に対して真っ向から向き合い、解決策を考えていこうと思います。
なぜ空室なのか?
前の項でご説明しました。住宅の供給過剰と人口の増加率も空室の背景にはありますが、そんな時代背景の中でも常に満室経営で入居者はウェイティング待ちの不動産オーナーがいるのも事実です。
では、空室で頭を抱えているオーナーと常に満室経営のオーナーでは何が違うんでしょうか?
これから、空室のオーナーと満室経営のオーナーの違いや原因について考えいきます。
以下に、空室の要因を挙げました。こちらにも空室に関する記事は載っているのでご参考ください。(参考:当サイト、空室対策関連記事)
- 立地と環境
- 専有面積と間取り
- 室内の差別化
- 建物管理
- 賃貸管理会社
上記の5つの条件が良ければ、不動産投資で満室経営が出来る可能性は上がるでしょう。
達仁comのサイトで上記の空室の条件については詳しく触れていますので、今回は簡単に上記空室の原因について触れておきます。
立地と環境
立地は、所有している物件が駅から近いか?駅から遠いか?駅から歩いて5分圏内かどうか?30分以上かかるかという駅からの距離の話です。
環境は、物件周辺にスーパーやコンビニ、商店街があるのか?という住みやすさのことです。例えば物件周辺の治安が悪ければ、入居者も住みたくはないでしょう。
先に申し上げますと、この物件の立地と環境の選択が不動産投資の成功か否かを分ける大きな要素でもあります。なぜなら、不動産は一度購入すると二度と動かすことができない、そして立地と環境は入居者が物件を選ぶ際の優先順位としても高いからです。
専有面積と間取り
専有面積は、部屋が狭すぎないか?狭い部屋とは具体的に13~17㎡で、部屋に入った瞬間に狭くて圧迫感があったりする部屋です。
間取りは部屋が三点ユニットバスであったりする場合です。今の入居者は三点ユニットバスではなく、バストイレ別、独立洗面台を選ぶ傾向にあります。
特に女性の入居者はバストイレ別、独立洗面台は必須の方が多いです。
室内の差別化
今の入居者はニーズが多様化して、自分好みの部屋や内装にこだわりがあります。フローリングが茶色、壁は白いクロス、どこにでもあるような内装の部屋を入居者は選ばなくなってきました。
満室経営を目指すのであれば、今後入居者から選ばれる部屋にしていかなければなりません。例えば、壁紙をコルク調にしたり、全体を白基調の内装にしたり。入居者が求める部屋にしていかなければ継続的な家賃収入は見込めません。
建物管理
建物管理は、建物の外観がきれいかどうか?清掃が行き届いているかどうか?ということです。
入居者が最初に見るのは建物の外観です。人は第一印象が大事といいますが、不動産も一緒で、入居者が建物を見て「この部屋に住みたい!」と思ってもらえるかどうかが重要になります。
賃貸管理会社
賃貸管理会社は入居者とのやり取り、契約関係などの対応を行い、オーナーと入居者の間で円滑にやり取りを行います。
入居者づけは、賃貸管理会社と仲介会社との連携、インターネット検索サイトへの掲載などを通し行います。
つまり賃貸管理会社が入居者づけに積極的かどうか?というスタンスによって、空室の期間も決まってくるのです。
空室原因のまとめ
以上5つの要素のどれか一つでも不十分になると空室の確立が高まります。まず所有している不動産物件の空室の原因は何なのか?ということを明確にしましょう。
原因が明確にならないと、空室対策のしようがありません。
例えば、病院で医師に診察をしてもらい、病気の原因を突き止めないと処方はできないのです。風邪で熱があるという症状なのに、腹痛の薬を処方しても意味がありません。むしろ逆効果になってしまうことがあります。
同じように、空室の原因も明確にして、空室対策の薬を処方しましょう。
空室対策の方法
ではやって出てきました、空室対策の方法です。繰り返しになりますが、空室の原因が明確になってからの空室対策です。
例えば、入居者をつけるためになんとなく「とりあえずリフォームをしてみよう」「家賃を下げて入居者をつけよう」ということはやるべきではないです。なぜなら、空室の原因が明確ではないからです。対策が的確ではないかもしれないからです。
では上記でご説明した空室の原因についてそれぞれの対策を考えていきます。
まずは空室対策できる条件と空室対策できない条件に分けてみたいと思います。
空室対策として改善できない条件
ではどうやっても空室対策として改善できない項目を挙げます。
- 立地と環境
- 専有面積
- 築年数
上記の3点は変えることはできません。なぜならば、不動産は動かすことがきないですし、部屋を広くすることはできないからです。築年数も変えることはできません。
空室対策として改善できる条件
以下の項目は、空室対策において改善できる項目です。
- 間取り
- 内装
- 建物管理
- 賃貸管理会社
- 家賃
以上の5つの項目のうちどれかを改善していくことによって空室対策を行っていきます。
では具体的な空室対策の方法について挙げていきます。
- 初期費用を下げる
- リフォームをする
- リノベーションをする
- 建物管理会社を変える
- 賃貸管理会社を変える
- 家賃を下げる
以上の7つが具体的な空室対策の方法になります。
では一つ一つ具体的にご説明していきます。
初期費用を下げる
初期費用を下げる方法として敷金・礼金を下げる、一ヶ月フリーレントなどがあります。
入居者としては、敷金・礼金は家賃一ヶ月分や二ヶ月分と金額が大きいです。特に引っ越し代を少しでも安く抑えたいと思っている入居者にとってみると、かなりの負担です。
ですので、敷金や礼金を下げることによって、引っ越し費用を押さえたいニーズがある入居者を取り込むことができます。
オーナーにとってみても、長期間空室が続くよりも、敷金や礼金を下げてでも入居者をつけた方が家賃収入が安定して入ってくるので収益は上がります。
また、一ヶ月フリーレントも敷金や礼金を下げる方法と似ています。考え方は上記の説明と同じで、空室期間の損失を考えたときに、一ヶ月フリーレントにしてでも入居者をつけた方が家賃収入が安定します。
例えば、家賃7万円の物件で一ヶ月フリーレントにする場合と、半年間空室が続いた場合、それぞれ一年間の家賃収入の違いを考えていただきたいです。
一ヶ月フリーレントで一年間入居者がついた場合
半年間空室が続いて、半年間入居者がついた場合
一ヶ月、半年間空室の場合の家賃収入の差額を求めます。
以上の計算結果より、上記の例では一ヶ月フリーレントで入居者がついた場合と、半年間空室が続いたのちに入居者がついた場合の年間家賃収入では35万円の差が出てくるのです。
なかなか入居者がつかない場合は一ヶ月フリーレントにしてでも、入居者を入れたほうが長期的な空室のリスクを考えると良い判断になります。
リフォームをする
リフォームとは部屋の内装の表面的な、クロスやフローリングなどを交換し改装することを言います。
リフォームをすることによって、入居者目線のニーズのある内装に変えることができます。ただ、築年数が30~40年となると設備の老朽化もあるので、部屋内部の古くなった排管などから水漏れをすることもあります。リフォームは部屋の表面的な部分だけの改装で、部屋内部の設備の老朽化はそのままなのでご注意ください。
リフォームをする場合の注意点としては、「自分の好きな部屋」にしない、ということです。どういうことかといいますと、物件に住むのはオーナーではなく入居者です。つまり入居者が求めている部屋にリフォームしなければ意味がありません。
よくある話が、オーナーが自信を持って何百万円と費用をかけてリフォームしても、入居者の求めている部屋ではなく、あまり入居者がつかないということです。
入居者の求める部屋にリフォームするべきなのです。
入居者の求める部屋にリフォームにするための解決策を挙げました。
- 具体的にどんな入居者に住んでもらいたいか?ターゲットとする入居者を決める
- ターゲットの入居者がどんな部屋を求めているか考える
- お客さまに直接アンケートを取るのが良いが、難しい場合は今流行りの部屋はどんな内装なのか、インターネット検索サイトを活用して、流行りの部屋、人気がある部屋を調査する
- どんな部屋にするかイメージが膨らめば、ノートなどに想像のイメージを書き込む
以上の手順で考えをまとめて、管理会社やリフォーム会社に案を伝えるのが良いでしょう。
もっと具体的に手順をご説明していきます。
- ターゲットを20代、30代の女性に絞る
- ターゲットの女性が部屋に対し何を求めているかを考える
- インターネット検索サイトから、20代、30代女性が求めている部屋を選ぶ。他社の女性に人気の物件を調査する。
- 具体的に部屋の内装、例えば独立洗面台、バストイレ別、コルク調のデザインクロスのイメージをノートに書き込み、賃貸管理会社やリフォーム会社に案を伝える
以上のように考えをまとめていきます。
リノベーションをする
リノベーションはリフォームと違い、部屋のクロスやフローリングなどすべてを取っ払い、部屋の内部の古くなった排管などもすべて交換して、スケルトン状態から部屋を作り上げていく改装方法のことを言います。詳しくはこちらの記事も参考にしてください。(参考:当サイト、リノベーションに関する記事)
リノベーションとリノベーション推進協議会について
リノベーションには、リノベーション住宅推進協議会が推奨する、”優良なリノベーション”という基準があります。(参考:リノベーション推進協議会)
少し、優良なリノベーション、リノベーション推進協議会についてご説明していきます。
リノベーション推進協議会とは、リノベーションを通じて市場の既存住宅の性能や価値の再生・向上を促進する一般社団法人です。
リノベーション推進協議会では、既存住宅全般、リフォーム、リノベーション、優良なリノベーションと四つに住宅の分類しています。
下記にリノベーション推進協議会のホームページから引用した、既存住宅全般、リフォーム、リノベーション、優良なリノベーションについて説明した表、図を載せました。
既存住宅全般、リフォーム、リノベーション、優良なリノベーションについて(リノベーション推進協議会ホームページから引用、引用元:リノベーション推進協議会)
既存住宅全般 | 既存住宅で、改修や修繕を施していない状態 |
リフォーム | 現状回復のための修繕営繕不具合箇所への部分的な対処 |
リノベーション | 機能、価値の再生のための改修、その家での暮らし全体に対処した、包括的な改修 |
優良なリノベーション | 「検査」→「工事」→「報告(開示)」→「保証」→「住宅履歴」の「統一規格」に則り、品質基準に適合したリノベーション |
既存住宅全般、リフォーム、リノベーション、優良なリノベーションの関係図(上記の表と同様に、リノベーション推進協議会ホームページから引用)
ちなみに、弊社では”優良なリノベーション”を基準としています。
ではなぜ優良なリノベーションを基準としているのか?それは、優良なリノベーションにすることで、オーナー、入居者にとってメリットがあるからです。
具体的には、オーナーにとっては基準が高い優良なリノベーションにすることで、物件を購入したのちに部屋設備や排管の不具合や修繕が発生する確率が非常に低くなり、結果、10年、20年、30年と修繕費用の発生による支出が抑えられ、その分、オーナーのマンション経営にとってはプラスの利益となり、マンション経営が将来的にうまくいくからです。
また、優良なリノベーションだと検査~工事~報告までの統一の規格に則ったリノベーションなので、オーナーが安心して物件を選べるというメリットもあります。
入居者にとってみると、部屋のデザインや内装が好みのものを選べるということ、そして、日常生活を送っているときに突然床下から水漏れしたり、突発的な部屋の不具合が起こりにくく、日常生活を気持ちよく送ることができます。
結果、リノベーションをすることによって、入居者から喜ばれることになるので、空室対策にも繋がります。
建物管理会社を変える
建物の外観が綺麗に保たれて、入居者からの印象が良いということは非常に重要です。
建物の外観が汚かったり、排管が錆びていたり、ゴミが散らかっている物件に住みたいと思う人はあまりいません。常に、外観や内装を整備して綺麗な状態に保つことによって、入居者からの建物に対する印象もよくなり、入居率のアップにつながります。
賃貸管理会社を変える
上記の賃貸管理会社の項でもご説明しましたが、賃貸管理会社の入居者づけに対する意識の持ちようは重要です。
なぜならば、賃貸管理会社の入居者づけに対する意識が高ければその分、入居者づけが早くなりオーナーに家賃収入を届けることができるからです。半年~一年空室が続き、それでも空室に対して何も対策を打っていないような意識の低い、また対応が悪い賃貸管理会社は変えるべきです。
賃貸管理会社は、オーナーが不動産投資を成功するための良きパートナーになるべきなのです。
家賃を下げる
あまりおススメしませんが、家賃を下げる方法もあります。家賃を下げるということは、例えば
家賃 6万円→家賃 5.5万円
のように家賃を下げて入居者を募集することです。ほぼ同じ条件の部屋が二つあった時に、どちらか一方の家賃が安ければ、入居者は家賃が安い物件に入居します。
なぜおススメしないかというと、家賃を下げることによってオーナーにとっては長期的な収益に影響が出てくるからです。
例えば、5年間、家賃を5,000円下げて家賃収入を計算した場合
30万円がオーナーにとって不利益となるわけです。さらに売却する際には、価格も下がります。
ですので、あまりおススメはしませんがすぐにできる空室対策なので、収益が下がる、売却する際は価格が下がることを覚悟の上行いましょう。
入居者目線が最も大事
以上7つの空室対策の方法について挙げました。どの空室対策の方法にも共通するのが、入居者目線であるということです。
オーナーの家賃収入は入居者あっての収益です。入居者に選ばれなければ家賃収入は入ってこないのです。ですので、土台は入居者目線に立ってどういった物件、部屋にしていくべきなのか?ということを考えるのが最も重要です。
これから、人口減少や住宅の供給過剰を背景にどんどん空き家数は増えていきます。その中でも必ず入居者に選ばれるような部屋にして、長期的に安定的な収益を得ていきましょう。
今回は、空室の原因と空室対策の方法についてご説明しました。
空室の原因究明と空室対策の方法について、詳しく知りたい場合はお気軽にお問い合わせください。まずは空室の原因を明確にして、必ず空室対策となる方法を考えていきます。