マンション経営の利回りとは、「物件価格に対して、年間でどれくらいの家賃収入を得れるか?」この基準を測る投資指標です。
利回りを知ることによって、投資先物件のおおよその投資効率がわかります。
一見すると、高い利回りの物件が投資先として良いのでは?と思うかもしれません。
しかし、一概にそうとも言えません。
利回りが高いということは、その物件に何かしらリスクがあると、考えられるからです。
リスクとは、
- 空室率が高い
- 家賃下落率が高い
- 修繕費用の支出
などさまざまな要因が考えられます。
そのため、マンション経営では利回りととその他の押さえておくべきポイントを理解することが重要になります。
利回りとは?
表面利回りと実質利回り
マンション経営の利回りには、表面利回り(グロス利回り)と実質利回り(ネット利回り)があります。
物件価格に対する、年間の家賃収入から投資効率を測るのが表面利回り、年間の支出も考慮したのが実質利回りになります。
以下に表面利回りと実質利回りの計算式を示しました。
表面利回り(グロス利回り)
実質利回り(ネット利回り)
実際の物件で利回り計算
以下、実際の物件で利回り計算をしました。
- 物件:中古ワンルームマンション
- 物件エリア:東京都中野区
- 築年数:12年
- 物件価格:2,000万円
- 購入時諸費用:600,000円
- 家賃収入:90,500円
- 管理費:7,800円
- 修繕積立金:6,300円
- 管理代行費:3,240円
- 固定資産税:59,000円
表面利回り(グロス利回り)
実質利回り(ネット利回り)
上記物件では、表面利回りが5.43%、実質利回りが3.97%です。
利回りから言えること
以上のように、利回りを計算することで、その物件のおおよその投資効率がわかります。
ここで注意してほしいのが、利回りは全て「満室時の利回り」で計算していて、更に物件価格、家賃収入などの上記項目以外の要素に関しては一切考慮していない、ということです。
通常、マンション経営をしていけば、空室リスクや設備劣化リスクなどさまざまなリスクを考慮して、その上で実践していきます。
※マンション経営のリスクについて詳しくは以下の記事を参照ください。
参照記事:
そのため、マンション経営では利回りとその他押さえておくべき要素を押さえておかなければいけません。
利回り以外で押さえておくべき5つの要素
では、具体的に利回り以外でどういう要素を押さえておくべきか?以下の5つの項目です。
- 空室率
- 家賃下落率
- 修繕費用
- 税金の支出
- 新築マンションと中古マンションの利回り
それぞれ説明していきますので、ご確認ください。
1.空室率
空室はマンション経営で最も注意しておかなければいけないリスクです。
なぜなら、空室になればオーナーにとって収入源が入ってこないからです。
空室率が高ければ家賃収入が安定して入ってこないので、例え高い利回りの物件でも、その恩恵を受けれません。
空室リスクが高い物件とはどのような物件か?以下、5つの条件です。
- 立地環境:駅から遠く、周辺の生活環境も悪い、都心へのアクセスも悪い
- 建物管理:建物の外観・内観が錆びて汚れていて明らかに暗い雰囲気である
- 専有面積:部屋が極端狭く、入居者のニーズがほとんどない(専有面積以外の条件が揃っていれば、問題にならないケースもあります。)
- 室内の差別化:室内の設備のニーズがなく、また生活をする上で不便な設備も多い
- 賃貸管理会社:管理会社が怠慢で、客付けや募集までのタイミングが遅い
※空室リスクについて詳しい内容は、以下の参照記事をご確認ください。
参照記事:
実際に、前述した東京都中野区の中古ワンルームマンションで、空室率の違いによる、利回りを計算しました。
空室率5%
空室率5%で、表面利回りと実質利回りの計算をします。
表面利回り(グロス利回り)
実質利回り(ネット利回り)
空室率5%では、表面利回り5.15%、実質利回り3.76%となりました。
空室率30%
空室率30%で、表面利回りと実質利回りの計算をします。
表面利回り(グロス利回り)
実質利回り(ネット利回り)
空室率30%では、表面利回り3.80%、実質利回り2.69%となりました。
利回り計算まとめ
空室率の違いによる利回り計算の結果を以下にまとめました。
表面利回り | 実質利回り | |
満室時 | 5.43% | 3.97% |
空率率5% | 5.15% | 3.76% |
空室率30% | 3.80% | 2.69% |
空室率が変わることにより、利回りも下がります。
空室は利回り低下に直接影響しますので、出来るだけ空室リスクが低い物件を選定しなければいけません。
空室リスクが低い物件条件について、詳しい内容は以下の記事で説明していますので、一度参照ください。
参照記事:
2.家賃下落率
マンションは購入時と比べて、築年数の経過から家賃が下落していきます。
家賃下落率は、新築、中古、物件のエリア、賃貸需要など様々な要因から、各物件で異なります。家賃が下落することによって、利回りも低下します。
実際に家賃下落率が新築、中古でどのように変化していくか?以下に築年数別の家賃下落率をグラフ化しました。
以下のグラフは、三井住友トラスト基礎研究所から引用した、東京23区の賃貸マンションを対象に、経年が賃料に与える影響を分析した結果です。
引用元URL:三井住友トラスト基礎研究所データ参考
図.築年数ごとの家賃下落率
グラフを見てわかるように、以下のことが言えます。
- 新築マンション、築浅マンション(新築~築10年)の家賃下落率は高い
- 中古マンション(築10~20年、築20年~)は家賃下落率が低い
新築マンションを購入後、10年以内に家賃下落から、利回りが大きく低下する可能性があります。
一方、中古マンションは家賃下落率が低いので、購入時の利回りを長期的に保持しながら運用出来ます。
3.修繕費用
マンションは築年数が経つと設備が劣化して、突発的な修繕が発生する確率が高まります。
中古マンション、特に築年数が10年を超えてくると、少しずつ設備の劣化により、修繕リスクが高まります。
以下に具体的な修繕項目、設備寿命、修繕費用(工事費込み)を記載しました。
修繕項目 | 設備寿命 |
修繕費用 (工事費込み) |
網戸 | 8~10年 | 3,000~
4,000円 |
換気扇 | 10~15年 | 30,000~
40,000円 |
IHコンロ | 8~10年 | 40,000~
50,000円 |
エアコン | 10~13年 | 80,000~
100,000円 |
給湯器 | 10~15年 | 100,000~
150,000円 |
電気温水器 | 15~20年 | 200,000~
300,000円 |
各設備によって設備の寿命は異なりますが、築年数が10年を超えて一度も修繕をしていない物件は、設備交換を考慮しておかなければいけません。
突発的な修繕費用への事前対応は以下の2つを実施してください。
- 修繕費用を事前シミュレーションして、いくらくらい費用が必要になるかを予測する
- 毎月の手取り家賃収入の一部を、修繕費用として貯蓄しておく
- 毎月の給与、ボーナスの一部を修繕費用として貯蓄しておく
また修繕費用を事前に防ぐ方法にリノベーションがあります。
4.税金の支出
マンションを購入した際、そしてマンションを保有中、売却、マンション経営の各プロセスで税金が発生します。
もしマンション経営の税金を全く知らずに始めれば、予期せぬ税金の支出により、収支を悪化させる恐れもあります。
以下、マンション経営で考慮すべき税金種類を挙げました。
マンション購入時の税金
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
マンション保有中の税金
- 固定資産税・都市計画税
- 所得税、住民税
マンション売却時の税金
- 譲渡税
それぞれ税金の概要を説明します。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得した際に、発生する税金です。不動産取得後、6ヶ月~1年半の間に納税通知書が届き、納税をします。
登録免許税
売買や相続などにより、不動産を取得した際に登記をする必要があります。その、登記申請時にかかる税金が登録免許税です。
印紙税
不動産で売買される際の、売買契約書やローン借入時の金銭消費貸借契約書等の課税文書に対して印紙税が課税されます。
固定資産税・都市計画税
毎年1月1日時点で不動産を所有している人に対して、固定資産税・都市計画税が発生します。一括納付か年4回に分けて分納します。
所得税・住民税
不動産所得で利益が上がれば、その他の給与所得などと合算をして、所得税・住民税がかかります。もし不動産所得が赤字となれば、所得が抑えられ、所得税・住民税が安くなります。
譲渡税
不動産を売却したことによって、得ることが出来た所得を譲渡所得といいます。譲渡所得は他の所得例えば給与所得などとは分離して、課税されます。
譲渡税には、5年以内、もしくは5年を超えて譲渡した場合の長期譲渡所得と短期譲渡所得があります。
短期譲渡所得の場合は税率が高いので、収支に与える影響は大きいです。5年以内の短期譲渡には注意をしましょう。
税金の支出を理解しておく
上記の中でも、不動産取得税は不動産取得後、半年~1年半の間で納税通知書が届き、納税をしなければなりません。まさに忘れたころにやってくる税金です。
マンション経営には、税金がかかるということを理解し、事前に税金の支出分をシミュレーションをしておきましょう。
※マンション経営の税金について詳しい内容は、以下の記事を参照ください。
参照記事:
5.新築マンションと中古マンションの利回り
また、新築マンションと中古マンションでは利回りが異なるので注意が必要です。
以下、新築マンションと中古マンションの利回りを比較した表を示しました。
新築マンションと中古マンションの比較
新築マンション | 中古マンション | |
物件エリア | 西巣鴨駅近辺(東京都) | |
築年数 | 新築 | 10年 |
物件立地 | 駅から徒歩8分 | 駅から徒歩3分 |
販売価格 | 29,800,000円 | 20,000,000円 |
家賃 | 104,500円 | 86,000円 |
表面利回り | 4.21% | 5.16% |
専有面積 | 25.60㎡ | 25.67㎡ |
新築マンションは、物件価格が中古マンションと比べて約3割ほど高くなるため、その分利回りが低くなります。
利回り以外で押さえておくべき5つの要素まとめ
- 空室率
- 家賃下落率
- 修繕費用
- 税金の支出
- 新築マンションと中古マンションの利回り
上記5つの項目は、利回りだけでは判断できない要素になります。
マンション経営で、利回りを得ながら、長期的に収益を得るには上記の項目もしっかり考慮しなければいけません。
都心部の利回り(参考)
マンション経営利回りの参考としていただくため、都心部の区分マンション、利回りのグラフ(2012年1月~2016年5月)を示しました。
区分マンションのエリアは都心5区(千代田、中央、港、渋谷、新宿)、23区西(中野、杉並、練馬)、横浜・川崎です。
(※引用元は不動産サイト「ノムコム・プロ」、引用元URL:ノムコム・プロの区分マンションの表面利回り(地域別))
不動産サイト「ノムコム・プロ」から引用した、区分マンション表面利回りのグラフです。
不動産投資情報サイト「ノムコム・プロ」の掲載物件の表面利回りでは、都心5区の区分マンションの利回りが低く、都心を離れると、利回りが高くなる傾向にあります。
都心部の物件は、他のエリアの物件と比べて物件価格が高い傾向があるので、その影響で利回りが高くなります。
最新情報(2016年5月)では、都心5区の表面利回りが4.79%、23区西が5.72%、横浜・川崎が6.61%となっています。
利回りが高い時でも(2012年~2013年)数%~数10%になっていることがわかります。
利回りだけで判断してはいけない!
以上、説明したように、マンション経営の良し悪しを判断する要素として、利回り以外に以下5つがあります。
- 空室率
- 家賃下落率
- 修繕費用
- 税金の支出
- 新築マンションと中古マンションの利回り
利回りが高い、低い、というのは物件の投資効率を見る上で役に立つ指標です。
しかし、実際に投資してしっかり収益を得れるのか?予想以上の支出は考えられないだろうか?など、マンション経営の利回り以外の要素も考慮して投資すべきかどうかを判断しなければいけません。
利回りと、マンション経営に関わるそれ以外の要素の重要性について理解できたでしょうか?
利回り以外の各要素について、もう少し詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。
実際の物件を例に挙げて、利回り以外の重要な要素についてわかりやすく説明いたします。