不動産投資を始めると、空室期間が長期化して支出が多くなったり、必要経費が多くなったり、さまざまな事情から赤字を計上する場合があります。
不動産業者から「赤字でも、節税になるので大丈夫ですよ」なんてことを言われた経験がある方もいるのではないでしょうか。
しかし、本当に赤字でも良いのか?不動産投資の赤字って、どうなんだろう。と不安に思ったりする方もいると思います。
この記事では、不動産投資で赤字を計上した場合の収支や帳簿上の関係について説明していきます。
不動産投資の赤字とは?
まず赤字とは、収入よりも支出が多い状態を示します。
一般的な家庭で考えると、年間の給与収入よりも、生活費や家賃、携帯代、趣味のお金などの支出が、収入よりも多い状態です。年間で見ると赤字なので、貯蓄なども出来ない状況です。
一方、不動産投資は、収支上と帳簿上の2つに分けられます。まずそれぞれの赤字の違いについて理解しましょう。
- 収支上の赤字
- 帳簿上の赤字
収支上の赤字
収支とは、実際の手元で動く収入と支出のお金の流れです。収入よりも支出が多ければ赤字となります。
収入は、家賃収入や更新料、支出には管理費・修繕積立金、管理代行費などが含まれます。
収入
- 家賃収入
- 礼金
- 更新料
支出
- 管理費
- 修繕積立金
- ローン返済
- 管理代行費
- 固定資産税
- 修繕費
- その他不動産投資に関わる支出
赤字となる要因
収支が赤字となる原因は、支出が収入よりも多いことです。そして、この支出要因を考えていくと、空室が長期間続いたり、ローン返済額が多額であったり、修繕費が重なったり、いくつか考えられます。
収支が赤字となる主な要因は以下2つです。
- 空室が長期化すること
- ローン借入金利が高いこと
1.空室が長期化すること
収入源は家賃収入なので、空室の長期化は赤字に直結します。
空室が長期化すると、家賃収入は当然入ってきませんが、毎月の管理費や修繕積立金などのランニングコストは継続的にかかってきます。そのため、ランニングコストから年間収支が赤字となる可能性が非常に高いです。
例えば、以下の条件の物件で、3ヶ月間空室が続くと年間収支は、-246,620円、赤字となってしまいます。
物件情報
- 物件:中古ワンルームマンション
- 築年数:12年
- 物件エリア:東京都中野区
- 物件価格:2,000万円
- 購入時諸費用:60万円
借入条件
- ローン借入:2,000万円
- 借入金利:1.992%
- 借入期間:35年
収支条件
- 家賃収入:90,500円
- 管理費:7,800円
- 修繕積立金:6,300円
- 管理代行費:3,240円
- ローン返済:66,170円
- 固定資産税:59,000円
年間収支計算
2.ローン借入金利が高いこと
次に、ローン借入金利が高いことです。
不動産物件は数百万円~、数千万円以上の価格がするので、多くの方は現金一括で購入するのではなく、ローン借入と少額の自己資金で物件を購入します。
多額のローン借入なため、数%金利が違うだけでローン返済額も大きくなります。
例えば、上記の1.992%の金利だと、
- 月間ローン返済:66,170円
- 年間ローン返済:794,040円
- 月間手取り収入:6,990円
- 年間手取り収入:24,880円
金利3.5%だと、
- 月間ローン返済:82,650円
- 年間ローン返済:991,890円
- 月間手取り収入:-9,490円
- 年間手取り収入:-172,880円
上記の通り、月間・年間の収支赤字が良くわかると思います。借入金利は不動産投資の成功か失敗を左右するほど重要なことです。
詳しくは以下2つの記事を確認して、必ず押さえて下さい。
参照記事:
帳簿上の赤字
次に帳簿上の赤字があります。帳簿上の赤字とは、収入と必要経費を記した会計上のことです。収支、実際のお金の流れとは異なります。
必要経費について詳しくは以下の記事を参照ください。
参照記事:
帳簿上の経費には、経費計上できるものとできないものがあります。例えば、ローン返済は全額が経費計上できるわけではなく、元金と利息部分に分けられ、利息部分は経費計上できます。
この帳簿上で赤字とは、不動産所得が赤字ということです。そして、その他の所得と損益通算されて課税所得が圧縮され、税金が安くなります。
詳しい税金の仕組みは以下、参照記事をご確認ください。
参照記事:
ここでは、帳簿上の赤字に大きく関係する以下2つの経費について詳しく説明します。
- 減価償却費
- ローン返済の利息
1.減価償却費
通常、必要経費には一括で計上できる項目がほとんどです。月間の管理費や修繕積立金、集金代行手数料、設備修繕費などは年間でかかった金額を経費に計上します。
一方、減価償却費は仕組みが少し異なります。
不動産などの高額な資産を経費に計上する場合は、一括で経費に計上するのではなく、法律上の耐用年数に費用を分けて、毎年経費として計上していきます。これが、減価償却費です。
耐用年数とは、資産をこれくらいの期間なら利用に耐えれる、という法律上の使用年数のことです。
例えば、パソコンは、耐用年数が4年で償却率が25%なので、20万円のパソコンを購入した場合は、
毎年5万円を減価償却費として、4年間計上することになります。
減価償却費は実際の支出では表れませんが、帳簿上の経費になります。
マンションの減価償却費計算
マンションの減価償却費を計算する場合はまず、土地と建物に分けます。土地部分に関しては必要経費に計上できません。
そして、建物部分を更に建物躯体と建物設備に分けます。それぞれ耐用年数が異なります。
建物躯体は、耐用年数が47年、建物設備部分は耐用年数が15年となります。
耐用年数
- 建物躯体:47年
- 建物設備:15年
そして、建物躯体と建物設備それぞれで減価償却費を計算していきます。
減価償却費について詳しくは以下の記事を参照ください。
参照記事:
2.ローン借入金利
ローンの返済は、元金部分と利息部分から構成されています。
例えば、2,000万円を金利1.992%、借入期間を35年でローン借入した場合に、初月のローン返済額は66,170円、そして元金部分、利息部分がそれぞれ、
元金部分は必要経費に計上できませんが、利息部分は計上できます。
ローン返済当初は利息部分の割合が大きいので、経費計上できる額も大きくなります。
しかし、利息部分は徐々に減って、元金部分の返済割合が多くなるので、経費計上できる額は少なくなっていきます。
不動産投資の赤字続きは絶対NG
以上のように、不動産投資には収支上の赤字と帳簿上の赤字がありますが、赤字続きの不動産投資は絶対にNGです。
まず収支上赤字は、手元から現金が出て行っている状況です。ある程度余剰資金があれば、多少支出があっても耐えれるかもしればせんが、余剰資金がない状態だと資金ショートしてしまいます。最終的に物件を売却、多額のローン残債だけが残る、そんな状況も考えられます。
次に帳簿上の赤字は、減価償却費やローン返済の利息部分などの経費もあります。そのため、節税効果が見込めるうち、収支が黒字であれば問題にならない場合もあります。
しかし、前述したように減価償却費は償却期間があり、ローン返済の利息も徐々に少なくなり、最終的に必要経費はなくなります。
よって、収支・帳簿上も黒字、しっかりと収支をプラスにして、そのプラスの利益から税金も納める。家賃収入の資産を毎年毎年積み重ねていくことが理想です。
そのためには、家賃収入を継続的に得ていきながら、借入金利や修繕費用などの支出を極力抑えていくことが重要になります。
参照記事:
重要なのは収支をプラスにしていくこと
最も重要なのは、月間・年間の収支を毎年プラスにしていくことです。そうすれば、余剰資金も増えていき、いざ設備が壊れ修繕が必要になったり、空室期間が長期化してしまった場合などに対処可能になります。
月間・年間で収支がどうなのか?黒字なのか?赤字なのか?
継続的に収支をプラスにしていく、安定した不動産投資を目指すならば以下の記事をそれぞれ順番に確認ください。
参照記事:
もし、収支・帳簿上の赤字についてわからない点があったり、もう少し詳しく知りたいことがあればお気軽にお問い合わせください。
不動産投資と赤字の関係について、実際の物件とわかりやすくまとめた資料をお見せしながら説明いたします。